田中嵐は、「結晶化」というプロセスを通じて、時間や儚さを可視化するアーティストです。物質が結晶へと変化する現象に着目し、生命や記憶の痕跡を作品として定着させる独自の手法を探求しています。
物質の持つ時間性に魅了された作家は、結晶という媒体を用いることで、流動的な瞬間を固定化する表現へとたどり着きました。今回、「tagboat Art Fair 2025」では、結晶が生み出す独特の質感と構造をどのように空間の中で展開するのか注目です。
田中嵐 Arashi Tanaka
ミクストメディアアーティスト。
2000年 福岡県出身。
2022年 多摩美術大学環境デザイン学科建築専攻卒業。
2023年 美術の側面から建築にアプローチしようとロンドン芸術大学へ留学。
2024年 同大ファインアート学科卒業。
結晶を媒体とし、時間や死生観をテーマに制作。人生の儚さと時間の流れを結晶を通じて可視化する表現を行っている。
英国美術界の最重要機関のロイヤル・アカデミーが 1769年から開催し続ける世界最古の公募展「RA Summer exhibition」にて、2024年の〈British Institution Fund Award (英国機関基金賞)〉を日本人で初めて受賞。
これを受け、世界の新進気鋭のアーティストを紹介する「Al-Tiba9 Art Magazine」(スペイン)、「FOA(FRIEND OF THE ARTIST)」(アメリカ)といったアートメディアに取り上げられる。国内外を問わず、ヨーロッパや中国をはじめとする幅広い地域で展示を行い、国際的な舞台でもその活動の幅を広げている。
アーティストとしての道を志すようになったのは、どのような出来事や思いがきっかけでしたか?
大学時代の卒業設計が大きな転機となりました。私の卒業設計は、祖父が遺した海洋散骨の遺言をテーマに、南極大陸に散骨ができる教会の設計を行いました。地球本来の姿が現存する南極という環境の厳しさが、空間を通して優しさへと変換され、人が自然循環の中に挿入されていく__そんな設計が、今でも私の原点になっていると感じています。
この世に一つでも存在すれば美しいと思えるもの。その答えは常に自然の中に存在し、それを形として想像する行為が、自分にとって最も心震える瞬間であると実感しました。これらの出来事が紡がれ、積み重なって、今の私に繋がっています。
アーティストとしての道を志すようになったのは、どのような出来事や思いがきっかけでしたか?
ロンドンへ留学していた際に受賞した「RA Summer Exhibition 2024」が大きなきっかけとなりました。サマーエキシビジョンはロンドンにおいて最も大きなイベントであり、無名から巨匠まで幅広い作家が応募し、審査を通過すれば展示できる場です。展示が決定した際、展示作家の凱旋パレードや教科書に載るような巨匠作家と隣り合わせで展示されるという経験ができました。
また、他の展示作品と比べて小さい私の作品から放たれる空気感を自分自身で確認できたこと、そしてその作品を見て感動していただいた経験が本当に嬉しくて、もっと経験を積みたいと思うようになりました。
現在の作風に至るまで、どのような試行錯誤を重ねてきましたか?影響を受けたものや、転機となった経験があれば教えてください。
まずは自己分析から始めました。自分の過去の経験や、これまで制作した作品をすべてリストアップし、共通点を探しました。その答えが「自然」「時間」「死生観」でした。そして、それらを繋ぎ合わせる「儚さ」が、自分にとって最も心震えるものであると気づきました。そこから形を成していくプロセスが現在の作風へと繋がっています。
作品を発表し始めたのはいつ頃ですか? 初めて作品を発表するまでにどのような経緯がありましたか?
2024年から本格的に発表を始めました。学外での展示機会を得るため、2024年から世界中の公募に応募しました。最初はなかなか通りませんでしたが、ロンドンで出会った方々やご紹介を受けた方を訪れ、お話を重ねながら学び、制作し、応募するというルーティンを繰り返していました。
作品に共通するテーマやコンセプト(アーティストステートメント)について教えてください。
⼈⽣は線⾹花⽕のように限られた時間の中で輝き、終わっていく。
儚い時間の流れの中で情報が昇華される世界で、個々の存在意義はどこにあるのだろうか。 私の作品制作は、結晶を媒体としている。液体が時と共に⽴体と変化していく結晶化の⾃然現象を⽤いて、氷のように情報を閉じ込め、時を凍結する。
朧に存在する私たちの⽣命⼒。絶え間なく脈打つ⿎動。思い出の地。消えてほしくない情報を結晶に乗せて凍結することで、不可視な情報を可視化することができる。振動によって促され、形状を変える結晶化の特徴を⽤いて、被写体を捉えた写真と被写体の⼼拍⾳とともに結晶を成⻑させる。
⼼⾳から発芽する結晶は、容姿などの消えゆく情報を結晶の中に凍結、保存する。結晶の輝きは⾒えない⽣命⼒へと⽣まれ変わり、鑑賞者に過去、現在、未来への移り変わる時間に思いをはせる。
時とともに結晶は変化していく。
表⾯の傷は時間とともに再⽣し、被写体の表情は⽩濁した結晶により幻想的に不明瞭になっていくが、⽔を与えることで輝きを取り戻す。
凍結によって、想いを未来に紡ぐ様⼦は、まるでタイムカプセルのようである。
作品はどのような技法や素材を用いて制作していますか? 制作プロセスについても詳しく教えてください。
結晶化を媒体とした作品制作を行っております。
鉱物から生成した結晶液の中に、自身で撮影した人物や風景の写真を沈め、結晶化の成長を待ちます。液体内に内蔵されたスピーカーから、写真と関連する音を流します。ポートレートなら被写体の心臓の音を、風景なら現地の音を。そうして結晶液を音波で揺らすことで、結晶の形は変化、成長しその方の音(情報)でその方を凍結する手法を用いています。目に見えない空気すら凍結し、立体へ変換していきます。
影響を受けたアーティストや作品、または制作のインスピレーション源について教えてください。
アントニー・ゴームリーさん、ジェームズ・タレルさん、
マイケル・ハイザーさん、オラファー・エリアソン、リチャード・セラさんなど。
1番は建築家にはなるのですが、ピーター・ズントーさんです。本の中に「空気感を設計する」という言葉が大好きで、自分も作品が放つ冷気のような空気感。それらが生み出せるような作品づくりを頑張っております。アンサンブル・スタジオも本当に心奪われました。あのような美しいものがこの世界にあると思えるだけ、私にとって心の救いだなと感じました。
今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
2つの軸で頑張っていきたいと思います。
1つは現在の結晶化シリーズの表現性を高めていく。
2つ目は結晶化シリーズの派生。
それらを軸としながら成長していきたいと考えております、そして、結晶の表現が建築規模のような作品も制作できるように制作の中で学んでいきたいです。
4月18日(金)から開催するtagboat Art Fair 2025ではどのような作品を出展される予定でしょうか。
今回のアートフェアでは、ポートレートシリーズと海景シリーズに加え、新シリーズの結晶作品を2点展示予定です。凍てつくされた記憶と生命力。それらから放たれる凍てつく空気。そのような空気感をブースで楽しんでいただけたら幸いです。
4月18日(金)から開催する「tagboat Art Fair 2025」に出展します!
tagboat Art Fair 2025
〈開催日時〉
2025年4月18日(金)16:00~20:00 ※18日はご招待のお客様のみご入場いただけます
2025年4月19日(土)11:00~19:00
2025年4月20日(日)11:00~17:00
〈会場〉
〒105-7501
東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝
東京都立産業貿易センター 浜松町館 2F
〈チケット〉
1500 円(2日間通し券)
※障害者手帳のご提示でご本人様、付き添いの方1名まで無料
※学生証のご提示でご本人様無料
※小学生以下のお子様は無料